ディープフェイクは児童ポルノ罪?最高裁の判断基準を弁護士が解説

最高裁判例が示す判断基準

先日、あるメディアで、未成年アイドルグループのメンバーの顔を合成したディープフェイクの性的な合成写真事件が報じられました。この事件で裁判所は、検察の主張とは異なり、「児童・青少年の性保護に関する法律」(以下「青少年性保護法」)ではなく、「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法」を適用して判断しました。なぜこのような結論に至ったのか、そしてこの判断が私たちの社会、とくに子どもを持つ保護者の方々にとってどのような意味を持つのかを、今回は分かりやすく整理してみたいと思います。

私がこれまで関連する最高裁判例を分析してきた中で見えてきたのは、顔は児童・青少年のものであっても、身体が児童・青少年のものとは見えず、成人のように発育した姿として表現されている場合には、児童・青少年性的搾取物とは認められない傾向があるということです。つまり、合成された画像に写る身体そのものが、客観的に見て児童・青少年の身体だと認識できるかどうかが、判断の中心的な基準になっているのです。顔だけがやや幼く見える程度にとどまる場合は、青少年性保護法ではなく、「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法」上の虚偽映像物編集・頒布罪として処罰されるにすぎません。

実際、最高裁第3部は昨年8月の判決で、「青少年性保護法第2条第5号にいう『児童・青少年が登場する児童・青少年性的搾取物』とは、児童・青少年のイメージではなく、実在する児童・青少年本人が登場して性交行為やこれに類する性的行為を行う内容を表現したもので、映像などの形になっているものを指す」と述べました。さらに、「合成写真などが同条項にいう『児童・青少年であると明白に認識できる表現物』に該当するかどうかは、児童・青少年を性的対象として扱う行為を厳格に規制しようとした立法趣旨や改正の経緯を踏まえたうえで、合成写真に写っている人物の外見や身体の発育状態、実際の年齢や身元、合成写真の出所や作成経緯、背景や状況設定など、そこに含まれるさまざまな情報を総合的に考慮して判断すべきである」と判示しています。



曖昧な基準が生む混乱

問題は、最高裁も下級審の裁判所も、似たような事件で判断が揺れがちだという点です。そのため、実務を担う弁護士でさえ、この基準を明確に把握しきれていないケースが少なくありません。「外見や身体の発育状態などを総合的に考慮する」という最高裁の説明そのものは筋が通っていますが、個別の事件において、具体的にどの程度の身体の発育があれば児童・青少年だと認識されるのかについて、はっきりとした指針を示しているとは言えません。今回の事件でも、弁護士たちから「顔と年齢が世間に広く知られている芸能人であれば、性的搾取物としての表現方法にかかわらず、未成年だと認識できる可能性がある」との批判が出ましたが、これもまさにこの基準の曖昧さから生じている問題だと言えるでしょう。


ディープフェイク技術の拡散とその裏側

近年、ディープフェイク映像が急激に増えています。とくにSNSに投稿された何気ない日常写真を合成して、性的な写真や映像を作り出す事例が大きく増加しています。AI技術の発達によって、誰でも手軽にこうした合成物を作れるようになったことで、その拡散のスピードも懸念されるレベルに達しています。


加害者は誰か青少年間で起きている現実と学校でのトラブル

こうしたディープフェイク映像は、大人が主に作っているものと思われがちですが、実際には青少年同士のあいだで作られ、共有されているケースが非常に多いのが実情です。男子生徒の場合、思春期に入ると性的なことへの好奇心が急激に高まる時期を迎えますが、この時期の道徳観や倫理観は、まだ大人のレベルには達していないことがほとんどです。そのため、本人は単なる悪ふざけや好奇心のつもりで、こうした行為に手を出してしまうケースが少なくありません。

これに伴い、学校暴力としての通報事例も増加傾向にあります。息子さんを持つ保護者の方は、お子さんが思春期を迎える前から、この問題についてはっきりと注意を促しておく必要があります。日本のご家庭でも、性教育についてはやや慎重な姿勢を取ることが多く、家庭内で十分な性教育が行われていないケースが少なくありません。その結果、子どもたちはSNSを通じて刺激的な映像に触れ、それを友人とやり取りするうちに、学校暴力として通報されるリスクにさらされてしまいます。とくに、先ほど述べたようにディープフェイク技術が発達したことで、ごく普通の学校の友人の写真を合成して性的な画像に加工する事例も増えており、その危険性はさらに大きくなっています。息子さんを持つ保護者の方であれば、ある日突然、お子さんがディープフェイク関連の学校暴力で通報されたという知らせを受けて戸惑う、という状況に直面することもあり得るのです。

ディープフェイク技術の発達は、私たちの社会に新たな法的・倫理的な課題を突きつけています。裁判所の判断基準がより明確になる必要があることはもちろんですが、それと同じくらい、家庭での実質的な性教育や、子どもへの注意喚起も大切な課題だと言えるでしょう。

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