補完捜査権廃止論争の背景
補完捜査権の廃止をめぐる議論が過熱する中、実際の統計は現行の捜査体制にも既に相当な遅延と空白が存在することを示している。筆者自身が代理した事件の経験を通じて、証拠を体系的に整理し提出することの重要性、そして被害者こそ弁護士の助力を必要とする理由について考察する。
最近、検察庁廃止の議論と絡み、検察の補完捜査権を廃止すべきか否かが大きな争点として浮上している。あるオンラインコミュニティでは、補完捜査権が廃止されれば警察が事実上捜査の最終決定権を握ることになり、地域警察との関係如何によって事件処理が左右されかねないとの懸念が提起された。
統計が示す捜査の遅延と空白
実際の統計を見ても、現行の捜査体制において既に相当な遅延と空白が生じていることが確認できる。聯合ニュースの報道によれば、今年上半期に検察が補完捜査を求めて警察に差し戻した事件は6万5千件余りに達し、同期間に警察が解決できずに未済事件として登録された件数も10万件を超えたという。補完捜査要求件数は、制度が施行された2021年以降の4年間で27%以上増加しており、とりわけ法理検討が難しい詐欺事件の未済登録は2018年に比べて10倍以上に増えたとされる。
こうした議論を見守りながら、筆者は最近自らが代理した事件の数々を思い起こすこととなった。
弁護士選任の有無がもたらす結果の違い
筆者が最近被害者を代理して告訴を進めた事件は、相手方である被疑者側に弁護士が選任されていたにもかかわらず、いずれも嫌疑が認められ起訴意見で送致される結果となった。これに対し、被害者が弁護士を付けずに自ら告訴を行う場合、とりわけ犯行が複数回にわたり、一つひとつを供述すること自体が負担となるような事件では、嫌疑が認められないなど結果が大きく異なり得ると筆者は考えている。捜査官もまた、担当事件数と時間に限りのある一人の人間である以上、証拠が整理されないまま無作為に提出されれば、これを丹念に検討することは容易ではないのが実情である。反対に、証拠を体系的に整理して提出する被害者の事件は、それだけ起訴意見で送致される可能性が高まり、そうでない事件は嫌疑なしとして不送致となる可能性が高まると筆者は考える。
被害者にこそ弁護士が必要な理由
このため、「自分が被害者なのに、なぜ弁護士を選任しなければならないのか」との反問にしばしば接するが、筆者の考えはむしろその逆である。被害者であるほど弁護士を選任する必要がある。捜査官の数は限られており、その力量とエネルギーもまた無限ではない。証拠を体系的に整理し、捜査官が事件を把握しやすいよう手助けしなければ、嫌疑なし不送致の決定が下されるにとどまらず、被疑者から誣告罪で逆に攻撃される危険まで負わなければならない場合すらある。
実務上、告訴事件が送致または不送致として決定されるまでには、早ければ3~4か月、遅ければ1年近くを要する。筆者が代理した事件が比較的迅速に結論に至ることができたのも、証拠を整理された形で提出したためであると考えている。他方、大半の事件は1年近くの時間を要しており、他の依頼人が自ら告訴を行ったもののうまく進まず持ち込んできた事件を見ると、告訴から1年を超えても決定が下されない場合もあった。問題は、このように長い時間を要したからといって嫌疑が認められるとは限らないという点である。異議申立ての段階で選任を受けて接した別の事例の中には、告訴人が当初告訴した数十件の犯罪嫌疑事実のうち、たった一件を除く残り全てが嫌疑なしと決定された状況にある事件もあった。
こうした結果を見ても、結局は被害者自らを守るためにも、相応の報酬を支払い、事件を誠実に遂行してくれる弁護士を選任することが必要であると筆者は考える。補完捜査権廃止論争の本質は、結局のところ警察捜査の品質と信頼をいかに担保するかにあると思われる。ただし、その議論とは別に、現在の捜査実務において被害者が自らを守り得る最も現実的な方法は、証拠を体系的に整理し、捜査機関の負担を軽減できる専門家の助力を得ることであるという点を強調しておきたい。
